
連休中に観たDVDは『薬指の標本』というフランス映画。原作は『博士の愛した数式』の小川洋子。この小説が話題になっていて映画化もされていたと記憶しているけれどまだこの作家の小説は読んでいないし、映画の方も観ていません。
レンタル屋で『標本』の文字とパッケージの解説を読んでみてそそられたのです。
この映画のなかで出てくる標本の工房には依頼主が標本にして欲しいものを持ち込むわけですが依頼主が出来上がった標本を持ち帰るわけではないところがミソ。標本にするのは死んでしまった小鳥の骨だったり、楽譜を持ち込んで、標本にして欲しいのはその紙の楽譜自体ではなくそこに記された音楽だったり、顔にある火傷の痕だったり。
それらは元学校の女子寮だった部屋に標本化されて保管されるというわけ。
依頼主は持っていることが耐え難いようなものを標本にしてもらって、そのちょっと不思議な場所に安置されることを望んで持ってくるという感じ。手元に置いておけないけれど標本化されてそこに安置されることによって、持ち主は嫌なことも、悲しいこともすっきりと単なる思い出に昇華させることができるのかも。
この対象物を標本化する行為は写真化する行為ととても似ています。私の場合は。
この映画、カメラワークがとても美しいので観ていてスチルカメラ出身者に違いないと思ったらやはりそのようです。[ida]